周りの大人の反応【先生編】と不登校の原因 – 学校に行かなかった頃4

前回の記事の冒頭でした、ひとつの問い。

あなたのお子さんが「学校に行きたくない!」と言い出したら、あなたはどんな反応をするでしょうか。

お子さんのいらっしゃらない方も、できるだけリアルに想像してみてください。
または、友人や知り合いの子が不登校だと聞いたときの自分の反応はどうでしょうか?
甥っ子、姪っ子だったら?

前回はわたし、りさが小学4年生の時に「学校に行きたくない」と言い出した時の親の反応、特に母についてでした。

今回は当時通っていた小学校で担任を受け持っていた先生たちについて綴ります。

このブログに書かれていることは一つの実例です。あくまでもりさ個人の体験と主観に基づいています。
不登校の当事者を直接ご存知の方も、そうでない方も、当事者の方々にそのまま当てはめることはできない、ということをどうかご理解ください。

担任の先生たち

結論からいうと担任の先生にはわたしはかなりかなり!恵まれたほうといえます。
不登校の間に担当の先生は2人。
それぞれの性格や対応はもちろん異なるものの(人間だもの – みつを)
両方には相当助けられました。

90年代半ば、不登校児童については社会的にも徐々に問題意識がもたれて来たとはいえ、今と比べると児童全体に対する割合はまだ約半分。
職員室の中にも不登校児童への対応にあったった経験のある教員がいた可能性は低く、いたとしても児童100人が居たら100通りの理由があるわけで経験に基づくアドバイスが役立つかというと、個人的には大いに疑問を持っています。

参考:
1995年(平成7年)度と20年後の2015(平成27年)年度の小学校の全児童数に対する不登校児童の割合は0.20から0.42と2.1倍に増加している。

平成 27 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(速報値)について
P64 不登校児童生徒数の推移 より
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/10/__icsFiles/afieldfile/2016/10/27/1378692_001.pdf

小学4年生当時、担任のS先生の心の内を知ることはできないけれど、彼女の対応は気丈だった。

彼女の印象はもともと自然体でどっしりと構える姿勢が際立っていたように思い出されます。
男子生徒の一人が「せんせい、大根足ー!」とからかった時は「ホレ、私の大根足」と脚をひょいと上げて見せていたし、
図画工作の授業時間、わたしがフェルトペンで上を向いている人物を描くのに苦心していた時は
「こんな感じ?」と自らわたしの正面に来て顔面を天井へ向け、
鼻の穴丸みえ!の状態でモデルになってくれました。

教職についてからまだ2〜3年の二十代の若いS先生にとって、
りさはおそらく初めて担任を受け持った不登校児童だったはず。

5・6年生の担任のT先生は三〜四十代で教員としては10年以上のキャリアがあったものの、
学校に来ないりさへの対応に試行錯誤をしたに違いありません。

原因は? 理由はなに?

はじめは当然というか、原因を突き止め、解決することで再び登校することを目指した対応。
S先生はりさが
いじめを受けているのか?
特定の嫌なことがあるのか?
世間話の中に質問を織り交ぜて探ってゆきました。

りさの方はというと、
明確な理由なんてはなから存在しない。
ただ、大人たちが理由を知りたのは何となく感じとれては、いる。

「学校に行かないことを納得してもらうには、どう言えばいいのか?」

子どもでも大人でも、この心理、あると思います。
「何の”せい”にしよう?」

「何かの”せい”にしたら、みんな納得してくれて
どうして行きたくないのか探るのをやめるだろう。」

そこで嫌いなクラスメイトを一人挙げました。
そのクラスメイトは3年生になってからの転校生で、学年の中の誰よりも体の大きな男子。
性格も気が強いし、体格に似合い力も強い子です。
Kさんとしましょう。

きっかけも何もさっぱり忘れてしまいましたが、わたしはそのKさんと掴み合いの喧嘩をしたことがありました。
10kg近く差があったかもしれない体重。とにかくわたしは彼を倒すことがとうとうできず、負けとなりました。
それまでのりさは腕相撲ではほとんど負けなし、力には自信があり、かつ負けず嫌いレベル700。
悔しくて、悔しくて。その日からKさんはわたしにとって大嫌いなヤツとなりました。おそらく彼もわたしを嫌いだったことでしょう。

「Kがイヤ。同じ教室にいたくない。」
本心でした。
でも、それは学校に行きたくない理由の全部ではありません。
彼がわたしの言葉によってその後、どんな対応がとられたのか、今となってはわかりません。
このせいで叱られてたりしていたら悪いことをしました。Kさん、ごめん。

S先生やりさの両親がそれを
“学校に行きたくない理由”
として信じたかどうかはさておき、
当時のわたしが周りの大人に納得してもらうための理由を作りだしたことには変わりありません。
(5%くらいは本当でしたが。ただ、仮にKさんがそのクラスから去れば、りさが登校を再開したかといえば答えはNOです。)

参考:
文部科学省『平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果について』より
不登校となったきっかけと考えられる状況
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/09/__icsFiles/afieldfile/2015/10/07/1362012_1_1.pdf

想像してみてください。
両親だったり、教員だったり、その子にとって直接利害関係がある大人から「どうして?」と理由を聞いて明確に答えられるでしょうか?
大人だってそうです。
就職や転職など、相手が描く自分の人物が人生に与える影響が大きい状況で受ける性格診断テストに100%正直に答える人はどれくらいいるでしょうか?

正直に答えるには、それ相応のインセンティブが必要です。
日本の教育に関する調査のやり方にも行動経済学のノウハウがもっと取り入れられたら…と願っています。

理由を本人が自覚している場合は、時がくれば話してくれる日が来るかもしれません。
それはもしかしたら5年後、30年後…かもしれません。

では理由がはっきりしていない子は?
どう答えるでしょう?

10歳のりさがしたように本当の理由がわからないので、周りの大人が納得してくれそうな理由をひとまず答えることもあるのではないでしょうか。

調査を行うことを自体を否定してはいません。
ただ、どう調査すれば中長期的な視点で解決につながるのか、研究者と教育現場が密になり改善されていくことを願ってやみません。

最大のサポートは、自然体

細かいひとつひとつの対応は割愛しますが、S先生とT先生に共通していたのは接し方が自然体だったこと。
少なくともりさの目にはそう映っていました。

3年の間家の中に居続けたことも、
小学校の卒業式には出席したことも、
中学からは学校に行こうと決めたことも、
りさが自分で選んだ行動だった。

自分で考える。
自分で選ぶ。
自分から行動する。

わたしが自らそうした時に、S先生もT先生その瞬間を見逃さず、止めず、見守り、認めたこと。
自分から行動するその時まで、焦せらせることなく自然体で寄り添ってくれたことが最大のサポートでした。

りさには自然体に見えていたS先生とT先生ですが、当時を振り返って考えてみれば、
母と連絡を取り合ったり、
ほぼ毎日放課後に給食で出たわたしの分の牛乳やパンを自宅まで届けてくれ、
そのたびに言葉を交わしたり、時間も労力も想像できないほど割いて対応してくれていたのは想像に難くありません。

頭が上がらない。あるのは、感謝だけ。

ありがとうございます。では、また^^