畑作?サンクチュアリ?酪農からの転換の可能性 – もと酪農スタッフに質問!vol.7

環境・健康・動物へもたらす影響を受け畜産業が抜本的な転換を求められる今、公平で平和的な転換の道を対話で見出す試み。

ヴィーガンであるLisaが酪農スタッフ 丸山さん(仮名)をむかえ、〈ヴィーガン×動物産業関係者〉という一見まったく立場の異なる2人が、皆さんからの質問をきっかけに酪農家の目線にせまる。

酪農でない、別の道を選ぶなら

 

Lisa:想像でよいので、もし酪農をやめ別の道に進むなら、どんな道があると思いますか?

 

丸山:まずは畑作農家さんですね。すでに飼料として牧草やデントコーンを牛の栽培し、農機具や土地を持つ酪農家もいることを考えると、現実的な転換だと思います。

 

Lisa:なるほど。転換の為に私達にできることはありますか?

 

丸山:まずは経営的な見通しが欲しいと思う。仮に畑作農家になるとして、収穫した農作物の流通システムがあるとわかっていれば転換の動機になるんじゃないかな。

 

Lisa:転換を決断する上で、生産物の流通ルートが決め手のひとつになると?

 

丸山:自分だけで流通ルートを確立してゆくより、例えばキャベツを作ればこの道の駅で販売できる、というように。そう考えるとやはり農協の持つ流通ルートは強いですね。

 

農家さん自身が流通ルートを開拓するのは難しいと思います。かといって、外からコンサルタントや営業職の人が来ても、頑固な気質の農家さんならかなり警戒する。自分の知る限り、新しいものに対して「じゃあやってみよう」という考え方の農家さんが多いとは思えないです。ある程度身近な人からの提案なら受け入れられるかもしれないですが。

 

Lisa:農協の話が出ましたが、今の酪農も農協が搾った生乳を買い取るシステムがあるから、ある程度安心して酪農を続けているところはありますね。

 

丸山:そうやって買取りが保証されている仕組みでなければ、酪農の産業自体が回っていかないですよね。

 

Lisa:流通や買取りでいうと、畑作も同じシステムで動いていますよね。生産者は農協の規格に合わせて出荷できれば買い取ってもらえる保証がある。あまり会話にのぼらないけど、飼料・肥料・農薬の取り扱いも含めて、農協の力って強大。

 

丸山:そうですね。日本の農業のほぼ全てを支配していると言っても過言ではない。

 

Lisa:流通ルート確保でいうと、例えば、ヴィーガンコミュニティが収穫物の納入先の小売店や飲食店の開拓といったパートで助けになれるかもしれません。できることなら喜んで力になりたい人はたくさんいるはずです。

農家さんそれぞれの個性・地理的条件・地域の特性といった要素に合う方法を選ぶこと、何より当事者の農家さんのコミットメントが大切だと思います。トランジションの形に一つの答えはなく、当事者やサポーターのみんなが一緒に作り上げてゆくことになる気がします。

 

アニマルサンクチュアリ

 

Lisa:「ファームサンクチュアリ」や「アニマルサンクチュアリを知っていますか?またどう思いますか?

 

丸山:「アニマルサンクチュアリ」は聞いたことがあります。数年前、映画館に置いてあったフライヤーで初めて知ったはずです。最近はお店のアカウントがストーリーをあげていたりと、ソーシャルメディアでも見かけるようになりました。きちんと調べたことはありませんが、とてもいい活動だと思います。あれはボランティアでやっているのですか?

 

Lisa:そうですね。サンクチュアリは主にボランティアと寄付で成り立っているようです。北米やイギリスなどには多数ありますが、私が知る限り、現在日本のアニマルサンクチュアリは2ヶ所の見です。中長期的により多くのサンクチュアリが必要ですが、日本は寄付文化が薄いので、欧米のスタイルそのままでなく、日本ならではの運営方法を編み出すのがひとつの挑戦だと思います。

 

品種改変された“乳牛”も、アニマルサンクチュアリのように人間が作った場所で生活するのが動物のためにもよいと感じますか?

 

丸山:(人が作った場所で生活するのは)保護するわけだからやむを得ないと思います。盲導犬が働けなくなったら、保護する施設があるように、牛にもそういった施設があってもよいと思う。例えばですが、アニマルセラピーとつながるかもしれないですし。

 


牛にとって幸せな環境とは

 


Lisa:酪農家から転換後、牛たちはどうなると予想しますか?また、牛にとってどのような環境が幸せだと考えますか?

 

丸山:やはり牛が自由でいられる放牧の形が幸せだと思います。ただ、自然ではあり得ない、子牛は飲みきれない量のお乳を作る体になってしまっため、出産後の牛がいる場合は人間による搾乳は続けなければならないですよね。牛が自分でお乳を搾ってもらいたい時に搾乳用牛舎に来るような環境が幸せなんじゃないかな。

 

ロボット搾乳を導入した牧場では、牛の好きな時に(搾乳用牛舎に)入ってゆくと聞きます。実際は餌目当てですが。全て機械化して、牛自身が搾ってもらいたい時というか、乳房がが張ってきたら授乳用機械に入り、すると餌が出てくる。餌を食べる間に搾乳し、終われば前の扉が開いて牛が出てゆく…と言う流れ。

 

Lisa:自由さが幸せに繋がるという点に同意です。搾乳の他にはどんな点を自由にできると思いますか?


丸山:食事や睡眠時間が自由だと野生での暮らしに近くなりますよね。

自分は未経験なのでわからないことが、(牧場では)発情期中の牛は隔離しますが、そうでない牛も一緒の環境だと発情している牛が飛びかかって怪我を負わせない。雌だけの群れなら、人間が受精させなくても自然に落ち着く気がしますが、どうでしょう。牛の生態の話になりますね。

 

Lisa:そういった実践的なノウハウは、海外のアニマルサンクチュアリや、日本でも牛の自由度の高い放牧の牧場のやり方を参考にできそうですね。